災害復興支援報告 〜気仙沼から〜
災害復興支援として気仙沼で支援活動を続ける伊藤東洋雄防災士(奈良県支部:王寺町)から便りが届きました。
以下、全文を掲載します。
被災地復興支援活動中間報告
〜気仙沼だより〜
日本防災士会奈良県支部 伊藤東洋雄
気仙沼市におけるまちづくりの考え方
東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた宮城県気仙沼市の復興支援のため当地に来てはや1年が経過しました。本稿では、気仙沼市におけるまちづくりの考え方について報告します。
震災直後のがれき散乱の状況
かさ上げされたマンホール
【地震・津波発生からまちづくり復興まで】
1 地震・津波発生(平成23年3月11日14時46分頃)
2 被災者(家屋倒壊など)は学校の体育館などの避難所(105カ所)へ避難
3 仮設住宅を建設し、避難所から仮設住宅へ移転(仮設住宅は学校職場などに建設)
4 恒久住宅を建設し、仮設住宅から移転(主として次の3つのパターンがある)
−1 安全な場所に自宅を購入し各自で移転
−2 災害公営住宅に移転(自力での住宅再建が困難な市民のた
めの公営住宅)
−3 防災集団移転事業(津波被害の恐れがない地区への集団移転)で造成された宅地を購入し各自が建築後移転
【まちづくりの考え方 災害危険区域の指定と土地利用計画】
《総合的な津波防災対策》
■明治三陸・昭和三陸地震津波などの数十年から百数十年に一度発生する津波(L1津波)に対しては、海岸堤防により、確実に津波から街を防御する。
■1000年に一度といわれる今回のような津波(L2津波)が起こった場合浸水が想定
される地域には、居住しない。
《災害危険区域の指定》
L1対応の防潮堤整備等を実施しても、東日本大震災と同様の津波で浸水被害が発生する可能性が高い区域を基本として指定している。
災害危険区域に指定(平成23年7月)された地区は居住の用には使えなく、水産加工施設など商業・工業などの非居住区域となる。
【復興の現状】
1 災害公営住宅 19地区、1,998戸のうち完了0戸
2 防災集団移転地38地区・970区画のうち、今年3月に初めて6区画が完成した。
3 防潮堤 87カ所のうち完了0カ所
4 震災廃棄物(瓦礫)処理 完了
【復興への課題】
5 これまで経験したことがない大規模災害に直面して、復興への強いリーダーシップが求められる。
6 復興計画に対する住民の合意がまとまりにくい。(防潮堤の高さの決定など)
7 復興事業に時間がかかる。
・防災集団移転事業などの実施に際し、相続手続きや抵当権解除など地権者の同意が必要。
・埋蔵文化財調査や開発行為の手続きなど法律に縛られる。
8 広範囲にかつ時期を同じくして復興に取り組むため、行政の職員、建設会社、建設資材が
逼迫し、事業がはかどらない。
9 復興事業に時間がかかるため、それぞれの事情を抱えた住民には待ちきれなく、他の自治体に転居し、人口が減少し復興計画の見直しが必要になる場合がある。
3.5mかさ上げされる
建物は流され基礎のみが残っている
かさ上げされたマンホールと下水の仮設配管